レオナルド・ダ・ヴィンチ展 - Leonardo da Vinci THE CODEX LEICESTER

レオナルド・ダ・ヴィンチ展図録

レスター手稿の日本初公開.六本木ヒルズ森タワー52Fの森アーツセンターギャラリーで公開されているということで見に行ってきました.この手稿,年に一度だけ一カ国のみで公開されるというもの.現所有者はマイクロソフトで有名なビル・ゲイツ夫妻らしい.かなり厳重に管理されているようで,この展覧会でも実物の展示がされていたのですが,強い照明をあてると劣化してしまうということで,照度がかなり低く,その低い照度の照明ですら,点灯と消灯を繰り返し展示されていました.

展示の方法も面白く,参加型と言ったらいいのでしょうか,展覧会に来て見ている人がレスター手稿の中に書かれている現象を起こすことができるような装置がいくつか作成され,置いてあったのが印象的で面白かったです.中でも整流の中に様々な形をしたものを置き,流れに変化を起こさせる展示で流されていた流体は水であったのか,それともややゲル化して粘性を高めたものであるのか少し気になる..とちょっと違うところも気になりながら,障害物の置かれた流れを見ていました.

さて,このレスター手稿,驚くことに文字がすべて鏡文字で書かれていました.幼いころに「ま」や「す」といった平仮名を鏡文字で書いてしまったことがあるものの,わざと鏡文字を書くことは難しいように思います..この手稿の内容は,天文学・水力学・地球物理学に関するもので,そのうちかなりのページを水力学に関するものが占めている...(これを書いた時期,ダ・ヴィンチは水力学に大きな興味を持っていたのかしら...)

水力学に関する内容は,現在大学で学ぶような水力学(流体力学)に通じるものがあるようで,教科書などで見るような図とそっくりなものがいくつもあるのには驚きました.蒸気機関を思わせるような実験の図もあり,とても興味深く見ていました.

また,天文学に関しても地球・月・太陽の位置や太陽光の反射によって月は輝き,地球との位置関係によって月の見え方が変わるということをガリレオ・ガリレイの100年ほど前に考えて書き残していたということでさらに驚きでした.

これらの研究とダ・ヴィンチの絵画とがつながっていくようなのですが,年齢順に並べた絵画を眺めているとき,晩年に近づいていくと影をはっきりと意識しているのだろうか?という絵があったのには息を呑みました.また,これだけの観察や洞察とそれを行う力がなければ描けなかったということなのかもしれないと思いました.展示してあった絵は印刷ではあるものの,遠くから見るとその陰影と写実性によってか,本当に人がいるかと見まがう瞬間もありました.また,拡大をしても一部の狂いも見られないのだな..と思い,驚くことしきりでした.

写真は図録です.レスター手稿全紙葉の印刷が入ったものを購入しました.こういったものよりもっと再現性が高いものかと思うのですが,印刷技術の発達により,このような手稿やそのほかダ・ヴィンチ手書きのノートなどはファクシミリ版という複写物になり,かなりの精度で再現されているようです.