書の至宝展 於:東京国立博物館

最終日に行ったせいもあってか,かなり多くの人でにぎわっていました.

思いのほか嬉しかったのは,臨書を始めたころに書いた条福の課題とした「曹全碑」が展示されていたこと.あの字もこの字も書いたなと思いながら見ていました.

しかし,注釈に「因」字不損本とあります.このような注釈が入るのはとても残念なことです.それというのも,古い古典と言われるような書道のお手本のひとつには碑文から文字を写し取ったもの(拓本)があります.この曹全碑もそのひとつなのですが,拓本の価値をあげるために写しを作った後にきれいな状態で残っている文字を傷つけてしまうということをした人がいたためです.(と私は先生から教わりました)もちろん,自然の劣化によるものもあるのでしょうが,それだけでなくわざわざ傷をつけるという行為をした人がいたのも事実のようです.私利私欲のために文字の歴史の生き証人とも言えるような碑文を傷つけてしまう人がいたのは非常に残念です.なお,現在ではおおもとの碑文から拓本をつくることは許可を得た限られた人しかできないそうです.

書の至宝展は文字の始まりから王儀之の書に続き,楷書,行書・草書,日本へ渡ってきた書道の変化(伝来,写経・三筆,かなの発展)へ.そして再び中国へ戻り,さまざまな表現.日本においての屏風や色紙帖などでの表現.といったものが展示されていました.時代の流れとともに書き方や作風,紙,印鑑の押し方など変遷があります.

また,裏に別のものが書いてあった?という作品もありました.紙は貴重だったのかな.

見ごたえあります.今まで書いたことがある書体(楷書,行書,草書,隷書),印鑑を作るときに用いた書体(篆書),練習を始めたものの作品を作るところに至ってない書体(仮名),まだ学んでいない書体や作風がたくさんあります.実家を離れてからほとんど筆をとっていません.ぼちぼち思い立ったときに筆をとっていきたいものです.

それぞれの作品ひとつひとつ素晴らしいのですが,中でもぐっと興味をひいたもののひとつが押してある印鑑がものすごく細かいということ.一体どのようにして彫ったのでしょう...たくさん彫って訓練を繰り返してきたのかな.

さすがに王儀之のところはすごい人でした.列が進みません.あきらめて後ろから覗き込むようにしてみてきました.人が少ないときであれば近づいて細部を見,離れて全体を見,とするのですが,さすがに無理です.うっかり立ち止まってぼんやり見てしまうと他の方々に迷惑がかかってしまいますし,既に列は進まない状態です.(このとき,こういった人が多いときに見るためのいい暗黙の(エスカレータを昇り降りするときのような)ルールができればいいなと密かに思いました)

臨書にも使えそうなので図録を購入して帰りました.ずっしり.値段のわりにページがあるような気がします.じっくり見る時が楽しみです♪